白井京月の読書ノート

2009年から2014年の読書メモ

SNAがわかる経済統計学

SNAがわかる経済統計学 (有斐閣アルマ)

SNAがわかる経済統計学 (有斐閣アルマ)

経済学が極めて広範な学問であることは前にも書いたが、私は経済学を次のように分類している。
 1.経済思想
 2.経済理論
 3.経済政策
 4.経済統計
 5.世俗の経済談義(所謂、エコノミストの議論)
これらが複雑に絡み合ったものが経済学なのだ。
今回ご紹介する本は、経済統計の基本ともいうべき、国民経済計算(SNA)について書かれた一冊だ。目次を見て行こう。

 第1章 イントロダクション     作間逸雄
 第2章 SNAの基礎        作間逸雄
 第3章 SNAの体系        作間逸雄
 第4章 物価指数とデフレーター   松川太一郎
 第5章 産業関連表(IO)と諸統計 佐藤勢津子・松川太一郎
 第6章 四半期速報(QE)     佐藤勢津子
 第7章 サテライト勘定       佐藤勢津子
 付録1 QEの推計方法       佐藤勢津子
 付録2 SNA用語集        作間逸雄・佐藤勢津子

SNA(System of National Accounts)が確立されたのは、国際連盟から国際連合変わった以降のことだ。
国連統計委員会が最初に作成した刊行物は「国民勘定の1つの体系と若干の補助表」(A System of National Accounts and supporting Tables)、いわゆる「53SNA」がその起源である。
その後、何度も改訂され、現在の「93SNA」は、国連だけではなく、EC委員会、IMFOECD世界銀行の共同刊行物である。
日本が68SNA準拠の国民勘定統計から、93SNAに移行したのは2000年のことだ。
経済学の第一歩をどこからはじめるかは個人の自由だが、ベースになるのは「経済統計」だ。「経済統計」についての理解がなければ経済学を学んだとは言えない。その意味で、本書は数少ない良書であり、その内容を理解しておけば、巷の報道に惑わされることも少なくなるだろう。山登りに出かける時、コンパスを持って行くべくか、行かないべきか? 言うまでもない話だ。