白井京月の読書ノート

2009年から2014年の読書メモ

経済成長という信仰

開発や経済成長が達成したもの。それは貧困の拡大、格差の拡大、そして社会の破壊だった。しかし、今でも世俗の経済学者や一般市民は「経済成長」が重要だという信仰を持っている。この開発と成長のプロパガンダが、いかに政治的に練り込まれて作られたスローガンだったかを本書は暴露する。
この本は、ポスト・グローバル化時代の経済学を代表するフランスの経済学者セルジュ・ラトゥーシュの代表作2冊を収めたものだ。
第一部が「<ポスト開発>という経済思想」。第二部が「<脱成長>による新たな社会発展」である。
私たちは「経済成長」という呪縛から逃れなければいけない。

重要なことは、多様性と多元主義を蘇らせるために、一次元的な合理的経済人というパラダイム−地球の単一化と文化の自殺の主要な源泉−を抜け出すことである。

その通りだろう。
本書にはいくつもの具体的な提案がある。経済危機の今、経済システムは本質的な転換を求められている。この経済学は反体制なのではない。体制の水面下での動きだ。ここを見誤ってはいけない。