白井京月の読書ノート

2009年から2014年の読書メモ

福祉の公共哲学

福祉の公共哲学 (公共哲学叢書)

福祉の公共哲学 (公共哲学叢書)

本書は、14人の学者の論文集だ。
私が本書を購入したきっかけは、塩野谷祐一氏が編者の一人であったという点だ。塩野谷氏は、言うまでもなくシュンペーター研究の第一人者だ。塩野谷氏の論文のいくつかは、ウェブでも読むことができる。私はこれに共鳴して塩野谷祐一という経済学者に興味を持ち、この本に辿り着いた。
さて、本書は、ロールズの正義論、国家福祉の歴史、セン、ハイエク、ドォーキンの福祉観、さらにリバタリアン森村進氏の論文、ワークフェア論など、ほぼ福祉に関する諸説、諸理論を網羅していると言って良い。
福祉を学ぶ人のみでなく、より広く、経済学全般の研究者にも読んでいただきたい一冊だ。

主要目次
第1章 社会保障論の公共哲学的考察(山脇直司)
第2章 二つの「方法論争」と福祉国家塩野谷祐一
第3章 ロールズの正義論と福祉国家塩野谷祐一
第4章 ロールズにおける「福祉国家」と「財産所有制民主主義」(渡辺幹雄)
第5章 センの潜在能力アプローチと福祉国家システムの構想(鈴村興太郎)
第6章 ハイエク社会福祉(嶋津 格)
第7章 ロナルド・ドゥオーキンの倫理的責任論(長谷川晃)
第8章 リバタリアン福祉国家を批判する理由(森村 進)
第9章 分配論の構図(立岩真也
第10章 福祉にとっての平等理論(盛山和夫
第11章 福祉国家の改革原理(新川敏光
第12章 就労・福祉・ワークフェア(宮本太郎)
第13章 福祉国家とケアの倫理(今田高俊)
第14章 正義とケア(後藤玲子
補論1 福祉公共哲学をめぐる方法論的対立(小林正弥)
補論2 規範理論の整合化と重層的福祉保障の構想(後藤玲子)