白井京月の読書ノート

2009年から2014年の読書メモ

地図で読む世界情勢

地図で読む世界情勢 第1部 なぜ現在の世界はこうなったか

地図で読む世界情勢 第1部 なぜ現在の世界はこうなったか

地図で読む世界情勢 第2部 これから世界はどうなるか

地図で読む世界情勢 第2部 これから世界はどうなるか

本書ぼ原題は、『Le Dessous des Cartes』(地図の下にあるもの)であり、サブタイトルは「地政学の地図」だ。フランスの衛星テレビ局の長寿番組が15周年を迎えたことを記念してフランスで出版された本の翻訳版である。フランスでの出版は2005年9月。豪華本にも関わらず、あっという間に10万部を超えるベストセラーになったと言う。筆者、ジャン・クリストフ・ヴィクトル氏は、番組の司会者にして、本書の執筆者だ。ヴィクトル氏の父は有名な探検家であり、その影響を強く受けている。
さて、本書は第1部「なぜ現在の世界はこうなったのか」と第二部「これから世界はどうなるのか」に分かれている。章建ては以下の通りである。

第1章 アメリカ大陸、世界制覇への道
第2章 欧州とロシア、深淵なる戦略とアキレス腱
第3章 中東はいかにして世界の火種となったか
第4章 アフリカは飛び立てるか
第5章 アジアをいかにして読み解くか
第6章 戦争の論理
第7章 持続不可能な発展

内容はもちろんのこと、地図や図の色彩の美しさ、鳥取絹子氏の名訳も特筆に値する。
私が一番驚いたのは、インド洋の中心にある航空母艦の島、ディエゴ・ガルシア島の存在である。この島こそが、アメリカの世界戦略の中心=臍になっているのだ。島の位置は、インドから2000キロいない、アフリカとインドネシアからは3500キロ、ペルシャ湾からは4500キロ。オーストラリアの西岸からは5000キロとインド洋のど真ん中にある。
本書は、高校地理の副読本として最適だと思う。国際派ビジネスマンなら必携だ。また、企業経営者にとっても必読だ。世界を知らずして、世界で戦おうとする企業はないだろうから。