白井京月の読書ノート

2009年から2014年の読書メモ

次世代マーケティングプラットフォーム

筆者である湯川鶴章氏は本書で、自身のメディアの探究をこれで終わりにする、と述べている。というのも、本書によって、メディアと広告とウェブの未来をはっきりと見ることができたという強い確信が持てたからだと。
ITテクノロジーがいかに広告を変えているのか、そしてこれから変えて行くのか。本書では、それが詳細に示される。これからは、広告掲載という一方通行の情報流通ではなく、双方向の情報流通になる。いままさに、テクノロジーの大波が、広告ビジネスを飲み込もうとしているのである。
未だに、勘違いしている人がいるようなので簡単なことを書いておこう。どれだけ大きい市場でも、パーソナルなマーケティングは可能なのだ。そのことは、ヤフーやアマゾンが如実に示している。重要なのは、広告という概念を超えたマーケティング・プラットフォームの構築にあるということだ。
例えば、ヤフーでは、ユーザの行動履歴を900のカテゴリーに分類して、それぞれに適したく広告を表示している。アマゾンのeCRMは、現在最高に洗練されたマーケティング・プラットフォームと言えるだろう。そして、さらに重要なことは、これが、どれだけのマネタイズ(収益化の仕組みを作ること)に貢献しているかを測定する指標があるということだ。
最近、何かと批判もある行動マーケティングだが、その有効性は大きくい。逆に、消費者の側でもそれを積極的に逆利用しようとする人も多い。こういう人たちは、ある意味で、「マーケティングリテラシーを持った消費者」と呼ぶことが出来るだろう。
革新は周縁から起こった。そして周縁が拡大し、中心にあった広告という従来の概念は終焉を迎えようとしている。この変化に気がつかない企業は、従来の手法で効果の薄い広告に多くのコストを奪われるだけでなく、マーケティング・プラットフォームの構築、活用を疎かにし、衰退して行く。
本書は、現代の経営者および戦略部門の担当者にとっては必携の一冊だ。特に、その人達は、テクノロジーの詳細についてまで十分に理解しておくことが必要だ。なぜならば、それこそが競争力なのだから。