白井京月の読書ノート

2009年から2014年の読書メモ

カウンセリングの理論

カウンセリングの理論

カウンセリングの理論

カウンセリングは大きく二つに分けられる。一つは健常者のためのカウンセリングであり、もう一つはメンタルヘルス患者のためのカウンセリングだ。両者は別分野だと考えた方が良いだろう。前者が教育領域であるのに対し、後者は医療領域だからだ。ここで紹介する、國分康孝先生の「カウンセリングの理論」は前者に属する本だ。私は國分先生のファンであり、その著書のほとんどを読んでいる。カウンセリングの理論は、カウンセラーにとってだけでなく、すべての人にとって有益だと思っているからだ。(反面教師的な意味も含めて・・・)
さて、カウンセリングとは何なのか、カウンセリングをどう定義するのかという問題がまず最初にある。本書におけるカウンセリングの定義はこうだ。
「カウンセリングとは、言語的および非言語的コミュニケーションを通して、相手の行動変容を援助する人間関係である」。
もっとも、定義というのは各人各様で良いと、國分先生は言う。要はその人の「一貫性の基」があれば良いのだと。
カウンセリングの理論というのは実に40以上ある。40以上の政党ないし派閥があって対立しているのがカウンセリング業界の現状なのだ。本書は、そのようなカウンセリング理論の中から、「精神分析理論」、「自己理論」、「行動主義」、「特性・因子理論」、「実存主義的アプローチ」、「交流分析」、「ゲシュタルト療法」、「論理療法」などが紹介されており、カウンセリングの入門書としては最適だと思う。
それにしてもだ。カウンセリングの目的にすら、諸派があるということは十分に理解しておく必要があるだろう。あるカウンセラーは、パーソナリティの変容を目指し、あるカウンセラーは行動変容を目標とし、あるカウンセラーは問題解決に焦点を当てる。あなたが、クライアントだとして、何が出てくるかわからないレストランに行ってみたいと思うだろうか?
國分先生は、問題解決派なのだが、そうすると、カウンセラーとコンサルタントとの違いはどこにあるのだろう。あるとすれば、それは「人間関係=感情的交流」という点でしかないということになる。
さて、私がここで書きたかったのは、カウンセリングの理論のビジネスへの応用だ。同じ國分先生の「カウンセラーのための6章」にある、アレン・アイビイの有名な「マイクロスキル連続表」という技法などは、営業や交渉の基本とも言えるものだ。

「対人関係に影響を与える技法の連続表」
(強)対決、支持、論理的帰納法、解釈、フィードバック、自己開示、情報・教示・助言、
<中間3技法=焦点のあてかた、閉ざされた質問、開かれた質問>
意味の反映、感情の反映、言い換え、はげまし、繰り返し(弱)
アレン・アイビイ著『マイクロカウンセリング』(川島書店、1985)

カウンセリングは両刃の剣だ。重要なのは、自らの「一貫性の基」を確認しておくことだ。これこそが強さの源泉なのだ。この源泉なくしては、いかなる理論も応用も意味を意味を持ち得ないだろう。