白井京月の読書ノート

2009年から2014年の読書メモ

気づきのセラピー

気づきのセラピー―はじめてのゲシュタルト療法

気づきのセラピー―はじめてのゲシュタルト療法

本書は、日本におけるゲシュタルト療法の第一人者、百武正嗣氏によるゲシュタルト療法の入門書です。フリッツ・パールズが確立したゲシュタルト療法は、現代の心理療法NLP、プロセス指向心理学、TAゲシュタルト療法、フォーカシング他)の源流にあたります。ゲシュタルト療法は、理論よりも実践を重視しており「なぜ?」ではなく「いま−ここ」での気づきに注目します。過去を振り返って「なぜ?」を考えることよりも、いま「どのように」感じ、これかれ「どのように」するのかが重要だと考えるからです。とはいえ、理論が無いわけでは勿論ありません。パールズは、成長プロセスを自己自覚の領域の拡大プロセスと捉え、4層のモデルを示しました。
(1)決まり文句の層
(2)役割の層
(3)行き詰まりの層
(4)内破の層
筆者はさらに、シュタインガーが付け加えて5層目についても示しています。
(5)外破の層
また、自己成長を妨げるものとして、鵜呑み(イントロジェクション)、投影(プロジェクション)、反転行為(リトロフレクション)、無境界(コンフリエンス)、話題転換(デフレクション)をあげています。ゲシュタルト療法は、これらに障害を取り除くための方法でもあるのです。本書では、いくつもの方法が、具体例を交えてわかりやすく書かれています。

■最後は、負け犬が勝つ
さて、ここで「最後は、負け犬が勝つ」というお話をご紹介します。
パールズは、一人の人間の中には、いつも正しいことを言うトップドッグ(勝ち犬)と、それに逆らって怠けたり、好きな事をするアンダードッグ(負け犬)がいて、葛藤していると考えました。勝ち犬は、世間の目や努力を主張します。一方で負け犬はそれに抵抗するという構図です。勝ち犬の価値観は、両親や教師、先輩、あるいは社会や組織、文化や宗教によって与えられたものです。勝ち犬と負け犬がケンカをすると、負け犬はいつも謝ることになります。
しかし、このケンカは最後には負け犬が勝つのだとパールズは言います。ここがポイントです。結局のところ、最後に負け犬は自分のしたいことをする。(笑)良い話だと思いませんか?
もっとも、パールズは、だからこそ勝ち犬と負け犬のケンカは続くのだと笑うのですが・・・。
さて、このケンカ(葛藤)を完全に終わらせるには、どうすれば良いのでしょうか?
それは「あなたが自分自身の本当の声を受け入れること」で終わると筆者は言います。
さあ、負け犬の声を聞きましょう!!