白井京月の読書ノート

2009年から2014年の読書メモ

武器としての決断思考

武器としての決断思考 (星海社新書)

武器としての決断思考 (星海社新書)

昔々の日本では、有名大学を出て一流企業に入るなり、公務員になるなり出来れば、それだけで安定した人生が送れると考えられていた。いや、今でも高齢者の中にはそういう観念を持つ人が多数いる。しかし、そんな時代はとっくに終わっている。

有名企業で働いていることを「良い船に乗っている」と表現する人もいた。しかし、今はそこに胡坐をかいていられる時代ではない。良い船など無いと思った方が良い。複雑で厳しい時代なのだ。この本は、そういう時代に若者がどう考えて行動すべきかをディベートの手法を交えながら説いた若者へのメッセージでる。

良く考えるとはどういうことなのか。どう決断するべきなのか。今は人生設計や計画の意味が薄れたと筆者は言う。そうではなく、状況に応じて切れるカードを増やしておくことが重要なのだと言う。

若者に対する筆者の熱い思いがひしひしと感じられる。帯には「東大NO.1ベストセラー」と入っている。ただ、この本にあるように、いろいろなカードを切れるのは一握りのエリートなのではないかとも思う。また、筆者の背景には、昔ながらの上昇志向が色濃くあるようだ。その意味では、一般人の感覚とはかなり違うという印象だ。危機感の次元が違うのだ。

最後に大きい字で「自分の人生は、自分で考えて、自分で決めて行く」と書かれている。これは何よりも大事なことだろう。親や教師の意見で決めてはいけない。ましては怪しいコンサルタントや占い師の意見で決めてもいけない。自分で決めることこそが、生きるということなのだから。