母の発達
- 作者: 笙野頼子
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 1999/05/01
- メディア: 文庫
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小説のスタイルは、ドタバタ・ファンタジーだ。このドタバタ感について行けるかどうかが、この本を読むポイントでもある。好き嫌いはハッキリと分かれるだろう。
確かに灰汁の強い母のようで、ヤツノが苦しむのは良くわかる。いろいろな母が登場することから、そこに自分自身の母を見ることもある。近代の家族制度を批判しているという読みもあるが、そうではない。それは口実に使われているだけだ。
私は男なので母と娘の関係については良くわからない。まあ、どんな親子であっても、子の側には思うところがあるはずだ。完全に良好な親子関係など、逆に気持ち悪い。
母を好き放題にいじるこの小説は、女性にとってストレスの発散になるのかもしれない。というよりも、作者である笙野頼子氏自身が、一番発散したのではないだろうか。
社会学的、心理学的に高尚な意図を読み取る必要はないだろう。ドタバタを楽しみながら、ふと何かを思えれば良い。「母の発達」はそういう本なのだと、私は思う。