白井京月の読書ノート

2009年から2014年の読書メモ

人生を完全にダメにする11のレッスン

人生を完全にダメにするための11のレッスン

人生を完全にダメにするための11のレッスン

日本は未だにアメリカに追随する形で「成功」が善とされているようだが、おフランスの状況はまるで正反対だ。そもそも成功など基準の問題なのだし、基準は多様なもの。成功の中の失敗もあれば、失敗の中の成功もある。そう、完全にダメな人生というのも難しいものなのだ。筆者は言う。「完全にダメにする」の「完全」を字義通りに解釈してはいけないと。なぜならば、本当に完全に失敗するということは、ある種の成功として注目を集め、あるいは賞賛を受けるかもしれないのだから。
本書の狙いは、成功に憧れる愚かな人々を小馬鹿にすること、そして底の浅い「人生論」や「幸福論」を否定することだ。人生とは多様であり矛盾に満ちたものだという現実を、これでもかと示す。博識な筆者は、嫌味なほどに歴史や神話、哲学や文学を引っ張り出し、いかにすれば失敗できるのかを懇切丁寧に指導する。もっとも、まわりくどい表現に慣れていない読者は、途中で投げ出してしまうほどに「ウザイ本」でもある。真面目なのか、ユーモアなのか、逆説なのか、頭を抱える箇所も少なくない。(いや、そんな箇所ばかりだ・・・笑)それでも、シャレた表現にはこと欠かない。赤いペンを持って本書を読むならば、あらゆるページに線が引かれ、メモが書き加えられるに違いない。
本書には「43の基本原理」も示されている。もちろん「人生をダメにするための基本原理」だ。言い換えれば人生を豊かにするための基本原理かもしれないが、重要なのは自分を知ることであり、この43の原理について、妥当か否かを、10点、5点、0点で評価して行く。巻末には、その採点結果による評価と対策も掲載されている。
因みに私は「265点」で「ほとんどよろしい。」という評価を戴いた。喜ぶべきなのだろうか?
本書は、自分の人生がダメだ、と思っている人にこそ読んでもらいたい。きっと眼から鱗が落ちることだろう。ただし、読みこなすのは容易ではないかもしれないが・・・。それとも、成功を目指す人こそ読むべきだろうか。失敗を避けるためにである。
最後に、筆者のドミニク・ノゲーズ氏と、訳者の高遠弘美氏に心からの謝辞を贈ります。