白井京月の読書ノート

2009年から2014年の読書メモ

陰日向に咲く

陰日向に咲く (幻冬舎文庫)

陰日向に咲く (幻冬舎文庫)

劇団ひとり。1977年生まれ。改めて紹介する必要もないでしょう。私より皆さんの方が詳しいと思います。なぜなら、私はテレビをほとんど見ないし、お笑いの事は、あまり知らないからです。ただ、劇団ひとりは知っていました。面白い経歴と、人物に惹かれました。きっと、それでこの本を手にとったのだと思います。
実に良かった。5つの短編集なのですが、気負いがなく、自然体で書かれている感じがする。ストーリーは、どれも面白い。そして、人に対する温かい眼差しを感じる。若くして、いろいろな世界を知っているというのは凄いことだと思いました。
5編の中で、私が一番好きなのは「Overrun」です。主人公が、どこか私に似ているからかも知れません。(笑)
解説を、父、川島壮八氏が書いているというのもユニークですね。
是非、読んでいただきたいので、中身には触れないでおきます。どんな内容かについては、カバー裏の文章を引用するのが最適でしょう。

ホームレスを夢見る会社員。売れないアイドルを一途に応援する青年。合コンで知り合った男に遊ばれる女子大生。老婆に詐欺を働く借金まみれのギャンブラー、場末の舞台に立つお笑いコンビ。彼らの陽のあたらない人生に、時にひとすじの光が差す−。不器用に生きる人々をユーモアあふれる筆致で描き、高い評価を獲得した感動の小説デビュー作。

ひとすじの光。それは世俗的な成功などではないのです。生きるとは、そんな事ではないのです。人はひとすじの光によって変わるのでしょう。その光はは、計画したり、努力したりで訪れるものでもない。偶然なのです。私は、そういう時、偶然に感謝します。人生は、ひとすじの光の連続なのです。