伸びない市場で稼ぐ!
- 作者: エイドリアン・J・スライウォツキー,リチャード・ワイズ,佐藤徳之,中川治子
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 2004/04/24
- メディア: 単行本
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従来型成長モデル。それは実にシンプルだった。優れた製品を開発し、市場に出し、ひたすら売る。そして海外市場に乗り出し、買収・合併を進め、コストを削減し、機を見て値上げする。このパターンを繰り返すこと。それが、筆者、スライウォツキーの言う従来型成長モデルだ。しかし、製薬やハイテクといった一部の業種を除いては、もはやこのモデルは通用しない。必要なのは、需要の革新(ディマンンド・イノベーション)なのだと筆者は説く。それは、より高次元のニーズを見出して、製品、サービス、情報を新しい形のビジネスとしてデザインすることに他ならない。
本書は、こうすれば貴方の会社も新しい成長が可能ですといった簡単なノウハウを伝授したりはしない。会社のおかれている環境はそれぞれに違うのだし、そんな安直な本が現実に役に立つはずもない。筆者はまず、隠された資産と隠された負債に注目するように説く。
・隠された資産
1.従来の無形資産
知的財産とコンテンツ、特別なノウハウと中核能力、ブランド力
2.顧客関係資産
3.戦略的不動産資産
4.事業ネットワーク資産
5.情報資産
・隠された負債
1.企業文化面での負債(思考様式、等)
2.構造面での負債(組織構造、他)
3.外部面での負債
※詳細は同書、p.52−62、p.178−179
本書では、いくつかの事例とともに、実際にヴィジョンを作り、行動計画に落とし込むまでのノウハウが、そして人や組織がそれにどう関わるべきかが示されている。国内市場が縮小する中でも飛躍する企業はある。多くの企業が、従来型の成長モデル一辺倒ではなく「需要の革新」に取り組むならば、日本経済も再び活性化されるのではなかろうか。もっとも、それには単なるアイデアではなく、緻密な計画を一歩ずつ進める力量が必要なことは言うまでもない。