ウェブを変える10の破壊的トレンド
- 作者: 渡辺弘美
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2007/12/22
- メディア: 単行本
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本書は、2007年12月に出版されたものであり、賞味期限は2008年いっぱいという人もいた。ITの世界はそれほどに変化が激しいのである。筆者は、2007年6月まで、JETROのニューヨークセンターでIT分野の調査を担当していた最先端の専門家であり、内容の信頼性と鮮度は一級品だ。あとがきの中で筆者は、この本を、ITの企画、マーケティング、開発部門の人だけではなく、経営に携わっていろ人々にも読んでもらいたい、と書いているが、ITに疎いオジサマ方にこの専門用語だらけで、かつ難解なこの本が読みこなせるとは到底思えない。
ここで紹介されている10のトレンドは、どれもが複数の技術から生まれたものだ。そのトレンドとは、
1.ユーザを直接つかみロックインすること
2.「希少経済」から「潤沢経済」の中でルールが変わるということ
3.みんなの知恵を利用するクラウドソーシング化
4.リアルタイムの「プレゼンス」情報を生かすこと
5.ウェブ・オリエンテッドという潮流
6.仮想と現実を橋渡しするテクノロジーの発展
7.TV、映画、DVD等のウェブ化
8.激変するインターフェイス
9.ポストグーグルの潮流
10.セマンティック・テクノロジー/意味を理解する時代へ
である。
ウェブの新技術に慣れ親しんでいる人には違和感なく理解できるこれらの潮流も、ウェブをあまり使わないか、使っていても新しいサービスや技術に興味の無い人にとっては、まるで別世界の事のように感じられることだろう。そのような視点から、このエントリのタイトルを「階層化するwebユーザ」としてみた。逆に言えば、ITの企画や、マーケティングに携わる人もまた、webユーザが階層化されているという現実を強く意識するべきだという意味を込めて。
破壊的という響きには、一瞬でといった印象がついてくるが、そうではないと筆者は言う。「実際には、じわりじわりと、にじり寄るように変化が生じており、気がついたときには流れに逆らうことはできないほど大きな力になっているというのが正確なところだろう。(p.221)」
今、ユーザにとって大事なのは好奇心を持って新技術、新サービスに触れることであり、知らないうちにweb下層になるという状況を避けることだ。今のウェブでは、主導権はユーザにあるのであり、テレビを見るような受動的態度では取り残されるのである。ウェブの新技術は、ビジネスのルールを、社会のルールを変えて行く。もちろん、ビジネスそのものを、社会そのものを変えて行く。しかも、それは恣意的に構築されるのではなく、偶然性によるものだ。
梅田望夫氏は日本のウェブを「残念」と言った。しかし、日本企業が本気でウェブ経営を行うならば、そのポテンシャルは極めて高いのではなかろうか。これは何も、ICT企業に限ったことではない。イノベーションは、意外なところに隠れているかもしれない。