白井京月の読書ノート

2009年から2014年の読書メモ

マーケティングをつくった人々

マーケティングをつくった人々

マーケティングをつくった人々

米国マーケティング協会(AMA)による、2007年改訂のマーケティングの定義は以下の通りである。

Marketing is the activity, set of institutions, and processes for creating, communicating, delivering, and exchanging offerings that have value for customers, clients, partners, and society at large.
マーケティングとは、顧客、依頼人、パートナー、社会全体にとって価値のある提供物を創造・伝達・流通・交換するための活動、一連の制度、過程である。

2004年の定義には「制度」という言葉が含まれておらず、「組織的な機能」という文言が入っていた。何故、変更されたのかまでは調べていないが、「何がマーケティングなのか?」という問い続けることもまた、マーケティングの重要な一つの要素だとも言えるだろう。
本書は、マーケティングの世界をリードする10人(下記)へのインタービューをまとめたものである。
◆1 フィリップ・コトラー   マーケティング創始者
◆2 デービッド・アーカー   ブランド・エクイティの先駆者
◆3 レジス・マッケンナ    テクノロジーの将来を見通したマーケター
◆4 ドン・ペパーズ/マーサ・ロジャーズ  ワン・トゥ・ワンの教祖たち
◆5 アル・リース       ポジショニングの開拓者
◆6 ドン・シュルツ      統合型マーケティング・コミュニケーション・イノベーター
◆7 パトリシア・シーボルト  顧客経験の専門家
◆8 ジャック・トラウト    ポジショニングの開拓者
◆9 レスター・ワンダーマン  ダイレクト・マーケティングの伝道師
インタビューの内容は、難解な学説の説明ではなく経歴や経験に重心が置かれている。そういう方面に興味のある人には好著だが、専門書ではない。
一番面白かったのは、日本でもよく仕事をしているという、デービッド・アーカーの記事だ。彼は、「アメリカとは違い、日本では大学教授は尊敬されているらしく、また、日本のCEOは直接経営の采配をふるうことが少ない」と指摘する。そして、日本には、マーケティング志向の会社が少ないとも言う。アーサーが挙げた日本のマーケティング志向の会社はたった二つ。それは、資生堂ソニーだった。アーサーの言うマーケティング志向の会社が何を意味するのかは、今一つ曖昧ではあるが、マーケティング無くして経営は成り立たない。マーケティング論は、ある意味で現代の戦争論だ。理論とその戦略と戦術は絶えず更新されて行く。マーケティングに終わりはない。また、新しいマーケティングが生まれるのである。