白井京月の読書ノート

2009年から2014年の読書メモ

大いなる変貌

ヨーロッパの100年(上) 何が起き、何が起きなかったのか

ヨーロッパの100年(上) 何が起き、何が起きなかったのか

ヨーロッパの100年(下) 何が起き、何が起きなかったのか

ヨーロッパの100年(下) 何が起き、何が起きなかったのか

オランダで書かれたこの大著が、日本語で読めるということに私たちは感謝するべきだろう。本書は、オランダで40万部を売ったベストセラーであり、現在までに欧米12ケ国で出版されているという。私たちの生きた、そして生まれていなかった20世紀とは、どんな時代だったのか。それを本書は具体的なヒトの物語として伝えてくれる。構成は年代順となっているが、それぞれが独立した話、物語なので、読者はどこから読んでも良い。よほどタフな読書家でないと、本書を頭からお尻まで一気に読むことは出来ないと思う。また、こういう本は、少しずつ読んだ方が、血となり、肉となるのではなかろうか。
20世紀はふたつの世界大戦という暗い時代と、1960年代の西欧全体での未知の経済成長という社会が変貌する時代に塗り分けられるように思われる。そこにあるのは、人々のメンタリティの大いなる変貌だ。そして、大多数の人は、60年代以降の新しいメンタリティを持って生きている。それを否定するつもりはない。しかし、その歴史が、極めて浅いものであり、それ以前の時代がどういうものであったのかを学ぶことは、現在を、そして未来を考える上でも重要なことなのに違いない。
豊かさも、幸福も当然のことではない。そんなものは幻想なのだ。未曾有の経済危機というが、それが政治の失敗、経済政策の失敗であるという根拠はどこにもない。晴れの日もあれば、雨の日もある。夏があれば、冬が来る。そういう事ではないだろうか。今は、日本の少子高齢化、人口減少が騒がれているが、ロシアでも人口が現在の1億4500万人から、急激に減少する見通しだ。世界的に見て、経済が新しい秩序へと向かうことは必然だと言えるだろう。今も、世界は紛争に溢れている。それが、どう収束するのか、今は誰も知らない。私はブログで直裁に自説を展開しようとは思わない。ただ、印象的だった一文を本書の中から引用しておこう。

すべての言語は独自の世界のためにある。それらの世界は動き軋み、よほどのことがなければ融合することはない。(下巻:p.190)