白井京月の読書ノート

2009年から2014年の読書メモ

経済思想(全11巻)

経済思想〈1〉経済学の現在〈1〉

経済思想〈1〉経済学の現在〈1〉

今日ご紹介するのは、日本経済評論社から出版されている、「経済学の現在1」「経済学の現在2」である。私は、学者でも無いのに専門書を読むのが結構好きだ。この全集(全11巻)など、普通のビジネス・パーソンなら、まず買わない。学生か、学者、そして一部の経済学マニアのための本である。

さて、この2冊では、以下の経済学が紹介されている。章題を列挙すると、環境経済学の現在、複雑系経済学の現在、社会経済学の現在、レギュラシオンの経済学、マルチエージェントベースの経済学、実験経済学の現在、進化経済学の現在、経済学から歴史学中心の社会科学へ、市民経済史の現在、厚生経済学の系譜、だ。ついでに、第3巻以降のタイトルを列挙しよう。黎明期の経済学、経済学の古典的世界(1)、経済学の古典的世界(2)、社会主義と経済学、経済思想のドイツ的伝統、20世紀の経済学の諸潮流、日本の経済思想1、日本の経済思想2、非西欧圏の経済学。
ただ、これで経済学がほぼ網羅できているとは、まったく思えない。それほどに、経済学とは広い、魅力的な世界だということだ。
さて、どの時代にも言えることなのかもしれないが、経済学は政治や、利益の道具となり得る。それ故に、経済学者は大きく2種類に分類できると言えないだろうか。一つは、貧困の撲滅や公平の実現といった目的のために経済学を発展させようと真摯に経済学と取り組む学者である。もう一つは、専ら自らの利益にために都合の良い理論を捏造しようとする学者である。後者は一般に御用学者と呼ばれる。もっとも、経済学とは国家の利益のための闘争だという見方も成り立つのかもしれない。ある経済学者はブログで現実の経済に経済学が影響力を及ぼせるのは1/4程度だと書いていた。私たちは、経済学に過度の期待を持つことなく、また、その背後にあるものへの想像力を持って、メディアが発する経済学的言説を見て行くべきだろう。