白井京月の読書ノート

2009年から2014年の読書メモ

痛快、そして涙

自分のアタマで考えよう

自分のアタマで考えよう

日本を代表するアルファ・ブロガーちきりんさんの2冊目の著書がダイヤモンド社から発売された。謳い文句では「考えることについてのハウツー」だが、それだけでは無かった。痛快なエッセーでもあり、問題提起であり、提言であり、読者に対する檄でもある。その、視野の広さと思考の鮮やかさは卓越している。
大企業は、求める人材の要件をハッキリと「我慢する力が強く、空気が読める人」と示せば良いには笑えた。少子高齢化問題では、いかに合計特殊出生率を上げようとする施策に効果が無いかが明瞭に示されている。情報の収集や整理が考えることではない。それらは作業に過ぎない。考えるとは、インプットをアウトプットに変換すること。一番大事なのは、まず最初に意思決定のプロセスを決めることだと、ちきりんさんは言う。
日本、中国、韓国の直近100年比較、そして、米、英、日、独、ロ、中の60年比較はユニークな労作だと思う。単なる整理ではなく、そこには切れ味のある深い思考がある。歴史という縦軸と、世界よいう横軸で見る縦横比較も、アウトプットにするまでの「思考」が重要なのだ。ただ、年表を書き写したとしても、そこから考えることで、表現をブラッシュアップし、論点なり仮説なりにフォーカスして表現しなければただの知識で終わってしまう。
さらに本書では霞ヶ関改革まで論じられている。ここでは、現行の各省庁が、どういう団体のための組織であるかが、ズバリと書かれている。もちろん、リスクも計測しておられるだろうが、その勇気には涙が出てしまった。
また、末尾ではブログの更新を「究極の趣味」と言い放ってしまうし、筆者紹介には「現在、働かない生活を謳歌中」と書いてしまう。この、吹っ切れた感じも魅力の一つだろう。
自分の頭で考えた結果が、稚拙で、粗削りであっても良い。それがユニークで面白いし、自分で考えるのは楽しいことだ、と言う優しい言葉も嬉しい。もちろん、考えるとはどういうことか、は本書を読めばわかる。