白井京月の読書ノート

2009年から2014年の読書メモ

クラッシュ・マーケティング

クラッシュ・マーケティング

クラッシュ・マーケティング

ビジネスの停滞要因を破砕する9つの方策。
たまには流行の本についても書いておくべきだろう。今までに紹介したマーケティングの本が大企業向けであったり、ハイテク産業向けだったが、この本はまるで異質である。個人事業主から、中小企業はもちろん大企業に至るまで、使える技法が満載だと言っては褒めすぎだろうか。いや、本当にライバルには読まれたくない。そんな気持ちすら湧いてくる本なのだ。筆者、ジェイ・エイブラハムは冒頭でこう豪語する。

 私は不況が大好きだ。
 不況は、受ける痛手も大きいが、景気の良いときよりも悪いときのほうが、成長分野が豊富にあることに気づかせてくれる。
 不況においてこそ、ライバル企業の何周も先を走ることができる。要はこの苦境をバネにすることができれば、一人勝ちできるのだ。景気の良いときには誰も気づかなかったビジネスチャンスや、市場、取引、発想に気づける。その方法を教えようというのがこの本なのだ。

本書で示される「ビジネスが停滞する九つの要因」とは以下の通りだ。
 1.強力なライバルの存在
 2.絶対的な売上不足
 3.業績の不安定
 4.戦略ゼロ
 5.経費が利益を食いつくす
 6.新しいことにトライできない
 7.差別化・独自化できていない
 8.マーケティング力不足
 9.周囲の力を活用できない
筆者は過去25年間に400業界以上、1万人以上のクライアントの問題解決に尽力してきており、現在はロサンゼルスを拠点とする、エイブラハム・グループ・インクのCEOだ。読みやすい本なので、軽く流してしまいそうになるが奥行きがある。軽く流して読むと、すべては簡単な事のように書かれているが、そんなはずは無いだろう。
監訳は金森重樹氏だ。巻末には「監訳者からのメッセージ」がある。その中で金森氏はこう書いている。「僕が他人へのコンサルティングをやめた理由は、僕が資金を投資して、事業のノウハウを持つ人間と組んで事業を興すほうがリターンが大きいからです。」この発言を聞いたコンサルタントは、どんな反応を示すのか、気になるところだ。
この本は、経営関係者だけではなく、起業を考えている学生などにも読んでもらいたい一冊だ。おそらく、多くの勇気と知恵を与えられるに違いない。