白井京月の読書ノート

2009年から2014年の読書メモ

現代人必読の教科書

ネット未来地図 ポスト・グーグル時代 20の論点 (文春新書)

ネット未来地図 ポスト・グーグル時代 20の論点 (文春新書)

この本には、現代日本を生きるすべての人が知っておくべき事が書かれている。
いわば、現代の常識にして「教科書」と言っても良いだろう。時間が無いので、かいつまんで説明しよう。詳しく知りたい人は、Amazonの書評を読むなり、それよりも本書を買えば良い。(※私はなにも、筆者、佐々木俊尚氏のまわしものではない。)

さて、87ページには以下のような記述がある。

NTTドコモはさらに進めて、携帯電話を使った消費者の行動を徹底的に捕捉し、その行動をもとにしたプラットフォームを作り出そうとしている。「マイライフ・アシスト・サービス」がそれで、2007年度の経済産業省情報大航海プロジェクト」にも採択された。・・・(中略)・・・たとえば携帯電話にはGPS(全地球測位システム)による地理情報があれば、カメラを使った画像もあり、あるいはおサイフケイタイをかざすことによって得られるお店や自動販売機との交信もある。・・・(後略)

何がしたいのかはお分りだろう。これらの情報を解析して、顧客の各々に「お勧め」を提供するのだ。逆に言えば、個人の消費行動等から、消費の傾向など、いわゆる個人情報を膨大に持っているということだ。

書き出すと長くなるので、この本を読むと分かることを箇条書きにして整理してみる。

◆1 アマゾンが日本のオンラインショッピングを制覇するであろう理由
◆2 SNSの人間関係はリアルの人間関係に近い
◆3 確率論を用いたレコメンデーションは進化し続ける
◆4 個人消費の15%程度がポイント付与の対象になっている(2005年)
◆5 顧客属性の入手は重要だ
◆6 経済産業省の「企業ポイント研究会」は、ポイント交換のプラットフォームの統一を提案した
◆7 プラットフォームは、OSからブラウザに変わる
◆8 企業買収だけで事業をドライブさせる企業は、新しい社会的価値を生みだせない
◆9 成長曲線に乗った第3世代ベンチャーは、はてなミクシィドリコム、等である
・・・いや、書きだすときりがない。(笑)

著作権問題から、テレビ、新聞社、雑誌の将来、セカンドライフはどうなるのか、新たなネット下流とは何か、Twitterとは何か、RMT出稼ぎとは・・・とにかく、本書は、買って読むしかない本だ。もっとも、業界の人には必要ないのだろうが。

こうしたテクノロジーの進歩の裏側には、携帯とパソコン利用者は、ある意味で常に監視されているという現実がある。調べれば、すべてが分かる。ネットには基本的に匿名性などない。それどころか、そこは情報管理の絶好の培地だ。それは、監視カメラの無い監視社会という言い方も出来るだろう。私たちは、そのことを知った上で、賢明に行動しなければならないのだと・・・それくらい常識か。(笑)

そうそう。昔、OR(オペレーションズ・リサーチ)の講義で唐津一先生から直接聞いた言葉を一つ。
「すべての行為は実験である。なのになぜ、データをとらないのか。」