白井京月の読書ノート

2009年から2014年の読書メモ

一度も植民地になったことがない日本

一度も植民地になったことがない日本 (講談社+α新書)

一度も植民地になったことがない日本 (講談社+α新書)

デュラン・れい子。1942年生まれ。はじめての著書だ。博報堂で活躍の後、スェーデン人と結婚。スェーデン、オランダ、ブラジル、フランスに在住経験を持つ。現在は、アート関係の仕事をされているらしい。本書のタイトルは、少し硬い感じもするが、筆致は軽快で読みやすい。ユーモアがあって、スパイシーだ。世界の中で日本がどう見られているのかが、筆者の経験の中から浮き彫りになる。新しい視点で日本を見たいという人にとっては、絶好の書だろう。
タイトルもそうだが、章の見出しも刺激的だ。「日本は世界の「孤児」として生きよう」「有名な日本語はKAMIKAZE」などという刺激的なフレーズも出てくる。流石は元コピーライター、と言ったところか。かといって、筆者は日本に悪い感情を持っていたり、批判的であるわけでもない。むしろ、日本を愛しており、好意的と言えるだろう。信長が黒人奴隷を差別しなかった話も出てくる。日本のサラリーマン社会・制度の話も出てくる。江戸時代220年の鎖国に対しても肯定的に捉えているのである。一人でも多くの人に読んでもらいたい本なので、内容にはあまり触れないようにしたいのだが、どんなテイストなのか、面白い箇所を引用しておく。

アメリカ人、オランダ人、アフリカ人が、戸外で食事をしていました。するとハエが一匹飛んできて、アメリカ人の皿にとまりました。と、アメリカ人は本でたたいて殺してしまったのです。バッシーン! すると、また一匹、今度はアフリカ人の皿に。するとアフリカ人はパッとつかんで、ムシャムシャ食べてしまいました。
 またまた一匹、こんどはオランダ人の皿へ。オランダ人は静かに手を伸ばして、そっと捕まえるとアフリカ人に差し出して言いました。
『さあ、いくらで買いますか?』」
 一同大笑い。いかにオランダ人が商売上手かということだ。「転んでもただでは起きない」という言葉は、まさに彼らのためにある。

なお、これはベトナム戦争の頃に作られたジョークだそうだ。